株式投資を始める前に、その企業の財務状況を把握することは非常に重要です。
特に注目すべきは「貸借対照表(バランスシート)」で、企業の安定性や流動性を判断する手がかりになります。
貸借対照表には、資産・負債・純資産が記載されており、どれだけ現金や資産を持っているか、負債がどの程度あるか、自己資本が健全かなどが分かります。
例えば、流動比率や自己資本比率といった指標を見ることで、短期の支払い能力や経営の安定度が数値的に把握できます。
株価だけに頼らず、企業の中身を見極めるためにも、まずは貸借対照表を読み解く力を身につけましょう!
貸借対照表とは

貸借対照表(たいしゃく たいしょうひょう)は、一定時点における企業の財政状態の一覧表です。
これを分析することで、企業の安定性や流動性を判断できます。
貸借対照表の借方(左側)は資金の運用状況を、貸方(右側)は資金の調達源泉を表します。
貸方はさらに、返済が必要な負債と、返済不要な純資産に分けられます。
金融機関からの借入れによる資金調達はデット・ファイナンス、株式発行等による資金調達はエクイティ・ファイナンスと呼びます。
資産
資産は大きく「流動資産」「固定資産」「繰延資産」に分類されます。
大分類 | 小分類 | 具体例 |
---|---|---|
流動資産 | 当座資産 | 現金、預金、受取手形、売掛金 等 |
棚卸資産 | 製品、商品、仕掛品、原材料 等 | |
その他流動資産 | 前渡金 等 | |
固定資産 | 有形固定資産 | 建物・土地、機械・装置、船舶・車両 等 |
無形固定資産 | 特許権、のれん、商標権 等 | |
投資、その他資産 | 投資有価証券 等 | |
繰延資産 | – | 創立費、開業費 等 |
流動資産と固定資産は、営業循環基準と1年基準によって分類されます。
- 営業循環基準
-
営業循環とは、企業本来の事業活動によって現金が商品になり、商品を販売して現金として戻ること。
この営業循環過程内で発生したものを流動項目と言い、それ以外は固定項目とする基準。たとえ回収までに1年を超える場合でも、営業循環の一部であれば「流動資産」に分類される。
- 1年基準
-
営業循環基準では分類できないもの(基準外の債権など)について、原則1年以内に現金化できるものを流動項目、1年を超えて現金化できるものを固定項目とする基準。
流動資産

流動資産は、当座資産、棚卸資産、その他流動資産に細分化されます。
- 当座資産
-
販売過程を経ず、比較的短期間で容易に現金化できる資産。
現金、預金、受取手形、売掛金 等 - 棚卸資産
-
- 販売目的で保有する資産(商品・製品)
- 販売資産の生産過程にある資産(仕掛品)
- 販売資産の清算に漸次消費される資産(原材料)
固定資産

固定資産は、有形固定資産、無形固定資産、投資その他資産に細分化されます。
- 有形固定資産
-
生産準備手段として役立つ実体価値を有した資産。
建物・土地、機械・装置、船舶・車両 等 - 無形固定資産
-
実体を持たない法律上の権利などの資産。
特許権、のれん、商標権 等
負債
負債は大きく「流動負債」「固定負債」に分かれます。
大分類 | 小分類 | 具体例 |
---|---|---|
流動負債 | 短期金銭債務 | 支払手形、買掛金、短期借入金 等 |
短期性引当金 | 返品調整引当金 等 | |
その他流動負債 | 前受金、預り金、未払い費用 等 | |
固定負債 | 長期金銭債務 | 社債、長期借入金 等 |
長期性引当金 | 退職給付に係る負債 等 | |
その他固定負債 | 繰延税金負債等 |
流動負債と固定負債は、資産と同様に営業循環基準と1年基準によって分類されます。
流動負債

流動負債は、原則1年以内に返済期が到来する債務です。
- 短期金銭債務
-
- 支払手形(支払期限と金額を約束する証書)
- 買掛金(購入商品のうち未払いの代金)
- 短期借入金 等
- 短期性引当金
-
返品調整引当金(販売商品が返品された場合に払い戻すための準備金)など。
固定負債
流動負債は、返済期限が1年超えの債務です。
- 長期金銭債務
-
社債、長期借入金 等
- 長期性引当金
-
退職給付に係る負債 等
純資産
純資産は、株主資本と株主資本以外に大別できます。
株主資本を構成する主要素は、資本金、資本余剰金、利益余剰金です。
一方で株主資本以外の項目は、新株予約権や非支配株主持分(連結財務諸表のみ)などがあります。
自己資本 | 株主資本 | 資本金 |
資本余剰金 | ||
利益余剰金 | ||
自己株式 | ||
その他の包括利益累計額(連結財務諸表の場合) | ||
株式引受権 | ||
新株予約権 | ||
非支配株主持分 (連結財務諸表のみ) |
純資産 = 自己資本 + 株式引受権 + 新株予約権 + 非支配株主持分
自己資本 = 株主資本 + その他の包括利益累計額
株主資本 = 資本金 + 資本余剰金 + 利益余剰金 + 自己株式
- 資本金
-
企業が発行した株式と引き換えに株主が出資した金額。
株主が払い込んだ総額のうち、資本金にされなかった額が資本準備金。 - 資本余剰金
-
資本準備金とその他資本余剰金の合計金額。
株式発行価格の2分の1を資本準備金にできる。 - 利益余剰金
-
法定準備金が資本金の4分の1に達するまで、配当金の10分の1以上を利益準備金または資本準備金として積み立てる必要がある。
法定準備金が4分の1を超えていれば、超過分を配当可能利益に振替できる。 - 法定準備金
-
資本余剰金の中の資本準備金と、利益余剰金の中の利益準備金の合計金額。

- 株式引受権
-
取締役や執行役の報酬として株式を無償交付される権利。
- 新株予約権
-
株式を一定の条件で取得できる権利。
- 非支配株主配分
-
連結子会社の資本のうち、連結財務諸表作成会社(親会社)に帰属しない部分。
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