株式会社は決算期にいろいろな書類を作成し、必要に応じて公開しなければなりません。
株を買う前に、その会社の財務状況を確認する癖をつけると、失敗が少なくなります!
計算書類

株式会社は決算期に6種類の書類を作成しなければなりません。
- 貸借対照表
- 損益計算書
- 事業報告書
- 株主資本等変動計算書
- 個別注記表
- 付属明細書
これらの書類は、以下の過程を経る必要があります。
各会社が備える監査機関の監査を受ける。
取締役会の承認を受ける。
定時株主総会の招集通知に際して、計算書類や事業報告、監査報告を株主に提供する。
通知方法は書面や電子メールなど。
計算書類は、定時株主総会で承認を受ける。
ただし、取締役会設置会社では、会計監査人とその他監査機関の監査報告が、計算書類が全て適法と認める場合は定時株主総会で報告の実で良い。
事業報告は、定時株主総会で内容を報告する。
株主総会で報告後、貸借対照表(大会社なら損益計算書も)を公告する。
ホームページ等を使う方法で良いが、官報や日刊新聞紙を使う場合は要旨公告だけで良い。
帳簿閲覧権の行使が可能。
経営に不正がある疑いがある場合は、裁判所に申し立てて状況調査の検査役の選任が可能。
お金

計算書類は、主に会社のお金に関する情報が含まれます。
法定準備金
法定準備金は、資本準備金と利益準備金からなる、法律で積み立てを強制しているお金です。
また、資本金と準備金の合計額に相当する資産を留保する必要があります(留保できない場合は自己株式の買受けや配当金を出すことは出来ません)。
- 資本準備金
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株式の払込金額のうち資本金に組み入れない部分や、合併・会社分割・株式交換・株式移転・株式交付の差益金をここに入れます。
- 利益準備金
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配当などを余剰金から支出するたびに、その10分の1以上を積み立てなければなりません。
資本準備金との合計が資本金の4分の1に達した後は、積み立てなくても良いとされています。
法定準備金の減少
資本準備金は、増資を続けるだけ増え続けます。
増資をすると払込金額の半分までは、資本金に入れずに資本準備金として良いため、株価の高い会社では特に資本準備金額が大きくなります。
ただし、法定準備金は使途が限られるため、会社運用面では不便です。
準備金は、株主総会の決議により減少できます。
減らした分を余剰金にする場合は、債権者のための拘束から解かれるため、債権者保護の手続きを取らなければなりません。
実際の仕訳例(仮定)

ある会社が新株発行で1株10万円の新株を100株発行し、総額1,000万円の払込金があったとします。
- このうち、500万円以上 を資本金として計上すればよく、
- 残りの 500万円まで は資本準備金として計上可能です。
借方(Debit) | 金額 | 貸方(Credit) | 金額 |
---|---|---|---|
現金 | 1,000万円 | 資本金 | 500万円 |
資本準備金 | 500万円 |
このように、株価(発行価格)が高額な企業ほど、1回の増資で発生する「資本準備金」の金額も大きくなります。
余剰金の配当
株式会社は余剰金がある時にしか配当は認められません。
配当に回せる分配可能額は、貸借対照表の資産の額から負債の額を引いて純資産額を出し、純資産額から資本金の額と法定準備金、その他法令が定める額を引いて計算されます。
資産 | 負債 |
資本金 | |
法定準備金、その他 | |
分配可能額 |

分配可能額が無いのに行われた配当は”たこ配当”と呼び、無効になります。債権者は株主に返還要求可能です。
配当の決定


余剰金の配当は都度、株主総会で決議します。
定時総会である必要はないため、臨時決算日・臨時計算書類を株主総会で承認すれば年に何度でも配当可能です。
取締役会設置会社では、定款に定めれば期央に1回、金銭配当を支出できます(中間配当)。
ただし、期末に欠損する恐れがないことが必須で、万一年度末に欠損が生じた場合は取締役が責任を問われます。
配当は金銭以外の財産を支給する、現物配当も可能です。
現物配当は株主優待とは異なります。
親会社と子会社の間で、不動産や株券を分配することを指します。
資本金の減少
株主総会の特別決議で可決されれば、資本金の減少が可能です。
ただし、欠損を穴埋めするためだけに定時総会で決議する場合は、普通決議で足ります。
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