株式は譲渡することが可能です。
特に自己株式の取得に関しては、株取引をしているなら知っておいて損はありません。
株式の譲渡の自由と制限

自由な譲渡と制限
株主にとって、投資の回収は株式の譲渡以外にないので、株式には強い譲渡性が必要です。
一方で、望ましくない株主を排除するために、会社は譲渡性に制限を加えることができます。
譲渡制限は、会社が発行する全株式にでも、一部の種類の株式だけにでも制限可能です。
譲渡制限の定め
株式の譲渡制限は、株主が投資を回収するのが不便になるため、譲渡制限を新しく設ける定款変更は特に厳格です。
全株式に譲渡制限をする場合は、株主総会で議決権行使可能な株主の頭数で2分の1以上、議決権の3分の2以上の賛成が必須です(特殊決議)。
定款の変更には反対の株主は、株主の買い取りを会社に請求できます。
また、株式の譲渡が制限されることは登記によって公示し、株券にも記載が必要です。
自己株式(金庫株)の取得

会社が自社の発行する株式を取得は、出資の払戻しと同じです。
また自己株式の取得は、株価操作や取締役の地位防衛の手段になる他、株価によっては株主に不平等になります。
この弊害を阻止するため、自己株式の買受けや処分は、手続き・財源・取得方法や取締役の責任が定められています。
株主総会が株式数・対価や期間(1年以内)を定めた決議であれば、会社は自己株式を取得できます。
決議 | 取得の相手株主を特定しない限り、株主総会の普通決議で足りる。 この総会決議は、定めた枠の範囲内で取得することを、取締役会に授権するもの。 |
財源 | 配当に回すことのできる剰余金のみ。 |
取得方法 | 市場取引、公開買付け、特定の株主からの取得。 |
会社が取得した自己株式は、消却や処分せず保有しておくこともできます。
自己株式を保有する場合は、会社自身が株主ですが、議決権や剰余金の配当を受ける権利は無くなります。
自己株式を処分すれば、処分相手が株主になり、新株発行と同じ結果になります。
処分相手や価格の定め方が不公平にならないよう、新株発行と同じ手続きで行う必要があります。
株取引への影響
自己株式(金庫株)の取得は、株取引にも影響が出ます。
自社株買いを行うと、発行済株式数が減少するため、EPS(Earnings Per Share)=1株あたり利益が増加します。
また、株式数が減るため、企業の配当金総額も減少します。
1株10円の配当金を出し、200,000株発行していた場合…
10円×200,000株=2,000,000円を配当金として準備する必要があります。
100,000株を自社株買いすると、10円×100,000株=1,000,000円の配当金で済むので、減額分を財務改善などに向けられます。
その他譲渡制限

会社の設立登記前や新株発行前での譲渡
会社の設立登記前や新株発行前には、まだ株式がありません。
この段階で株式引受人の地位(権利株)を譲渡しても、当事者間では有効ですが、会社との関係では無効です。
独占禁止法による譲渡制限
独占禁止法上、金融会社がある会社の株式を5%超を持つことは原則禁止されています。
子会社による親会社株式の取得
議決権の多数を所有したり、取締役の多数を派遣したりしてA社がB社の財務や事業方針の決定を支配している時、A社を親会社、B社を子会社と呼びます。
子会社が親会社の株式を取得することは原則禁止ですが、会社の合併・分割といった例外はあります。
ただし例外時も、一定期間内に処分しなければなりません。
株券の名義書き換え
株式の譲渡(相続含む)があっても、外部からは分かりません。
そこで会社法では、株式移転があっても、株主名簿で名義換えされるまでは、会社との関係では移転があったとはみなさないことになっています。
コメント